
実家は「資産」か「時限爆弾」か
「まだ親が元気だから」「縁起でもないから」……。そう言って目を逸らしているうちに、実家が「負債」に変わってしまうケースを、私は嫌というほど見てきました。 認知症が進めば、不動産の売却やリフォームの契約には「成年後見人」が必要になり、家族の自由は一気に制限されます。
親が自分の足で歩き、自分の意思で語れる「今」こそが、実家の未来を決める唯一のゴールデンタイムです。
1. 【パターンA】住み続ける:自尊心を守る「守りのリフォーム」
親御さんが「最期までこの家で」と願う場合。ここで重要なのは、見栄えを良くするリフォームではなく、**「介護を前提としないための環境整備」**です。
- 社会福祉士の視点: 介護が必要になってから慌てて手すりをつけるのは「後手」です。今のうちに段差を解消し、ヒートショック対策を施すことは、親の健康寿命を延ばし、結果的に介護費用(=子供の負担)を抑える最大の投資になります。
- 注意点: ここで「悪徳リフォーム業者」の影が忍び寄ります(後述します)。
2. 【パターンB】施設入所・住み替え:空き家を「稼働」させる
親御さんが施設に入る、あるいは子供の家の近くに呼び寄せる場合。家は「空き家」になります。
- 宅建士の視点: 放置は厳禁です。「特定空き家」に指定されると固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
- 賃貸に出す: 修繕費と管理の手間を考慮。
- 売却する: 「3000万円の特別控除」などの税制優遇が受けられる期間内に動くのが鉄則です。
- 行政書士の視点: 売却資金を施設費用に充てるなら、親に判断能力があるうちに「任意後見契約」や「家族信託」を検討しましょう。
3. 【パターンC】相続:争族を避ける「終わりのデザイン」
残念ながら親御さんが亡くなった後。ここで不動産は、現金のように等分できない「厄介な塊」になります。
- 普遍的なテーマ: 家には思い出が詰まっています。しかし、思い出は「共有名義」にしても守れません。共有名義は将来の売却を困難にする「地獄の選択」です。
- 解決策: 誰か一人が相続し、他の兄弟には現金で支払う(代償分割)、あるいは潔く売却して現金を分ける。これが家族の絆を壊さないための、冷徹かつ慈愛に満ちた正解です。
4. 警告:リフォーム業界の「事件」と賢い業者の選び方
ここで、住環境コーディネーターとしての私から、リフォームにまつわるリアルな警鐘を鳴らします。
【実際に起きた事件:過剰工事と点検商法】 80代の一人暮らしの女性宅に「近所で工事をしている者ですが、屋根の瓦がズレているのが見えた」と業者が訪問。不安を煽り、本来不要な屋根の葺き替えと、なぜか床下換気扇10台の設置で500万円を請求。これは典型的な**「点検商法」**です。
【失敗しないリフォーム業者の選び方】
- 「介護保険の住宅改修」の知識があるか: 20万円までの補助金制度を熟知し、ケアマネジャーと連携できる業者は信頼に値します。
- 相見積もりは「3社」まで: 多すぎても混乱します。価格だけでなく「なぜその工事が必要か」を論理的に説明できるかを見てください。
- 住環境コーディネーターの在籍: 建築の知識だけでなく、人間の「加齢による身体変化」を理解しているプロがいるかを確認しましょう。
さいたま猫が推薦する関連リンク集
- 国土交通省:空き家対策特設サイト
- 推薦理由: 国が示す空き家放置のリスクと活用法が網羅されています。親を説得するための「公的な資料」として非常に強力です。
- 一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)
- 推薦理由: 「マイホーム借り上げ制度」を運営。50歳以上の家を借り上げ、空室時も家賃を保証してくれます。売らずに貸したい派の強い味方です。
- 法務省:未来につなぐ相続登記
- 推薦理由: 2024年4月から相続登記が義務化されました。「知らなかった」では済まされない法的ルールを正しく理解するために必須のサイトです。


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