
認定調査を控えたご家族、特に介助を担っているお子様世代にとって、調査当日は「何をされるのか」「どう答えればいいのか」と、まるで親の試験を立ち会うような緊張感がありますよね。
私は大宮の街で現役の認定調査員として、日々多くのご家庭を訪問しています。調査員がどこを見ているのか、そして、ご家族がどう準備すれば「今のリアルな困りごと」を正しく認定に反映できるのか。
プロの視点から、**円滑に、そして正確に調査を終えるための「3つの極意」まとめました。これを読めば、当日の不安は自信に変わるはずです。
介護認定調査を「最高のサポート」に繋げるための準備ガイド
「認定調査員が来る」となると、ご本人が急にシャキッとして、普段できないことを「できる」と言ってしまう……。これは「調査員あるある」の筆頭です。私たち調査員は、その「取り繕い」も含めて見抜くプロですが、やはり限界はあります。
そこで重要になるのが、**介助者であるご家族の「準備力」**です。調査員は大きく分けて、以下の3つのポイントを時間中ずっとチェックしています。
極意1:基本の受け答え(コミュニケーションの確認)
玄関を入った瞬間から、調査は始まっています。まずは、ご本人の「現在の認識力」を確認します。
- 確認内容: 名前、生年月日(または年齢)、現在の住所。
- 調査員が見ている点: * 質問に対して即座に反応があるか?
- 声の大きさや、聞き取り能力(聴力)はどうか?
- 視力は日常生活に支障がないか?
- 会話に一貫性があるか(直前の質問を覚えているか)?
【ご家族へのアドバイス】
ご本人が答えに詰まっても、すぐに助け舟を出さず、数秒見守ってください。私たちは「正解を言えるか」ではなく、「答えるまでのプロセス」を見ています。もし普段と違う(無理に頑張っている)場合は、後でこっそり、あるいは調査の最後に「普段は名前も忘れることが多いです」と教えてください。
極意2:体の動き(身体機能のチェック)
次に、生活の基本となる動作を確認します。これは「できる・できない」の二択ではなく、「どれくらいの介助が必要か」を判断するためのものです。
- 主な動作:
- 手を高く上げる、足を伸ばす、関節の可動域。
- 椅子からの立ち座り、ベッドからの寝起き。
- 室内・室外の歩行、姿勢の保持。
- 片足立ち(バランス能力の確認)。
【ご家族へのアドバイス】
ご本人は調査員の前だと、痛みをこらえて「ほら、こんなに動けるよ!」とパフォーマンスをしてしまいがちです。調査員は、動作中のふらつきや、手すりへのしがみつき、動作後の息切れなどを細かく見ています。
「普段は一人で立ち上がれず、お尻を支えています」といった**「いつもの苦労」**をメモしておき、動作確認の際に添えていただけると非常に助かります。
極意3:生活シーン別「具体的なエピソード」の準備
ここが最も重要であり、認定の「特記事項(記述欄)」を充実させる最大のポイントです。以下の項目について、**直近1ヶ月以内の「具体的な困りごとエピソード」**を準備しておいてください。
| 項目 | 確認ポイントと準備すべきエピソードの例 |
| 食事 | 自分で食べられるか? むせ込みはないか? 「食べ残しを隠す」「食べたことを忘れる」などの行動はないか。 |
| 睡眠・精神 | 夜間の良眠。夜中の徘徊や、急に怒り出す、泣き出すといった感情の起伏。 |
| トイレ・排泄 | 間に合わずに失敗する頻度。パッドの交換を自分で適切にできているか。 |
| 外出・通院 | 道に迷わないか。病院で先生の話を理解し、薬の管理(服薬)が正しくできているか。 |
| 認知力 | 火の不始末(鍋を焦がす等)、同じことを何度も聞く、物の紛失を「誰かに盗まれた」と言う(物取られ妄想)。 |
【ご家族へのアドバイス】
調査員が一番困るのは、ご家族から「全部大変です」という抽象的な答えしか返ってこない時です。
逆に、**「先週、夜中の3時に起きて『仕事に行く』と言って玄関を出ようとして止めるのが大変だった」**といった具体的な日付や状況があるエピソードは、特記事項にそのまま書き込むことができ、審査会での評価に直結します。
調査を円滑に終わらせるための「カンニングペーパー」のススメ
当日、ご本人の前で「親の衰え」を事細かに話すのは気が引けるものです。また、緊張して伝え忘れてしまうこともあるでしょう。
そこで、「生活の困りごとメモ」を事前に作成し、調査員に渡してしまうのが一番の方法です。
- A4用紙1枚程度に、上記の「3つ目のポイント(生活シーン)」に沿って箇条書きにする。
- 「本人の前では言いづらいのですが」と添えて、調査の冒頭か最後に渡す。
- 調査員はそれを見ながら、不足している点だけを確認できるため、調査時間が短縮され、ご本人の負担も減ります。
認定調査員からのメッセージ:あなたは一人じゃない
認定調査は、ご家族の「至らなさ」を指摘する場所ではありません。むしろ、あなたがこれまでどれだけ頑張って、どれだけの重荷を背負ってきたかを、私たちが公的な書類として書き起こすための時間です。
私自身、社会福祉士として、そして後見人として活動する中で、多くの「家族の限界」を見てきました。
あなたが今日、誠実に事実を伝えてくださることで、適切なサービスが結びつき、結果としてご本人とあなたの「共倒れ」を防ぐことができます。
認定調査は「頑張った自分」を認め、プロの助けを借りるための第一歩です。
どうか、気負わずに。ありのままの日常を、私たち調査員に教えてください。
大宮の空の下、あなたの介護生活が少しでも軽くなるよう、私たちはペンを走らせています。ともに、この長い道のりを歩んでいきましょう。

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