
1. それは「強盗」ではなく、ただの「虐殺」だ
想像してみてください。深夜2時、静まり返った寝室。 突如として窓ガラスが粉砕される爆音。驚いて身を起こす間もなく、数人の男たちが雪崩れ込んできます。
彼らに「加減」という言葉はありません。 「金はどこだ!」という怒号とともに、80歳を過ぎ、細くなった腕は粘着テープで無造作に、血が止まるほどきつく縛り上げられます。抵抗する力などない老人の顔面を、若者の硬い拳が、あるいは土足の足が、何度も、何度も踏みにじる。
これが、いま日本中で起きている「闇バイト」による強盗の実態です。 彼らにとって、あなたの親は「人間」ではありません。指示役から与えられた「回収対象」という単なるタスクに過ぎないのです。
床に転がされ、肋骨を折られ、恐怖で失禁し、命乞いをする親の姿を想像したことがありますか? かつてあなたを抱き上げ、育ててくれたその手が、冷たい床の上で震えている。 最近の強盗は、金を奪うだけでは止まりません。口封じのために、あるいは単なる「見せしめ」のために、執拗な暴行を加え、最後には命まで奪っていく。そこにあるのは、私たちが知っている「日本」の治安ではなく、戦場のような、血の通わない残虐性です。
2. 介護認定調査員として目にする「絶望的な空白」
私は介護認定調査員として、毎日多くの高齢者のお宅を訪問しています。 身体の状況や生活の様子を伺う中で、私がもっとも「恐ろしい」と感じているのは、身体の衰えではありません。それは、「親と子の断絶」という、あまりにも深い空白です。
調査の際、私は必ず「ご家族との連絡頻度」を確認します。 そこで返ってくる答えに、私はいつも胸が締め付けられる思いをします。
「息子は忙しいから、もう数ヶ月は声も聞いていないよ」 「娘とは、お正月に短いメールが来たきりかな……」 「月に1回、電話があるかないかだね」
これが、現代日本の高齢者、特に独居の方々のリアルです。 厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」などのデータを見ても、別居している子と「毎日」連絡を取る親はわずか1割程度。「月に1〜2回」や「ほとんど連絡を取らない」という層が、年々増加しています。
実は、この「親子の空白」こそが、犯罪集団にとって最大の「隙」となっているのです。
3. なぜ「連絡を取らない親」が狙われるのか
犯罪集団は、行き当たりばったりで家を選んでいるわけではありません。 彼らは事前に「名簿」を作り、周到に下調べをします。その名簿には、資産状況だけでなく、その家の「孤立度」が記されていると言っても過言ではありません。
- 「アポ電」への反応: 息子や娘と頻繁に話している親は、怪しい電話がかかってきても「さっき息子と話した内容と違う」とすぐに気づきます。しかし、連絡が途絶えている親は、情報のアップデートが止まっており、騙されやすく、また「誰かに相談しよう」という発想が真っ先に浮かびません。
- 変化への無頓着: 庭の手入れが疎かになっている、郵便受けが溜まっている、不審な訪問者が頻繁に来ている……。こうした「異変」に気づけるのは、定期的に訪問する家族だけです。
- 「助けが来ない」という確信: 強盗集団にとって、一番怖いのは「すぐに家族が駆けつけること」です。連絡が疎遠な家は、事件が起きても数日間は発覚しない。その「時間的余裕」が、犯行のハードルを下げてしまうのです。
4. 介護認定調査の場で感じる「家族の気配」の重要性
私が調査に伺った際、玄関に「最近、お孫さんと撮ったと思われる新しい写真」があったり、カレンダーに「○日:娘が来る」と大きく書き込まれていたりするお宅は、どこか空気が違います。 ご本人もしっかりされており、何より「自分には守ってくれる誰かがいる」という自信が、防犯意識の高さに直結しています。
逆に、カレンダーが数ヶ月前のままだったり、家の中が荒れ果てていたりするお宅では、強盗だけでなく、悪質な訪問販売や詐欺の被害に遭っている形跡をよく目にします。 彼らは、あなたの親が「独り」であることを、あなた以上に熟知しています。
5. いま、あなたにできる「最強の防犯」
防犯カメラを設置する、窓ガラスを強化する。もちろん、それも大切です。 しかし、介護認定調査員として、そして一人の人間として、私は声を大にして伝えたい。
最強の防犯対策は、「親と連絡を取ること」であり、「親に会いに行くこと」です。
「元気?」というたった30秒の電話で構いません。 「週末、顔を出すよ」という一言でいい。 それが、親を犯罪者の名簿から外す、最も効果的な方法なのです。
頻繁に連絡を取り合っていれば、親は「今日、変な電話があったよ」とあなたに話せます。 あなたが会いにいけば、「庭に変なマーキングがしてある」ことに気づけます。 そして何より、近所の人に「あそこの家は、よく息子さんが来ている」と認識されることが、犯罪集団への強い牽制になります。
6. 結び:後悔は、事件が起きてからでは遅すぎる
もし、あなたの親が強盗に襲われ、血まみれの姿で発見されたとき、あなたは自分を許せますか? 「もっと連絡を取っていれば」「あの時、会いに行っていれば」 そんな後悔を、私はあなたに、そしてあなたの親に、絶対にしてほしくないのです。
介護認定調査の現場で私が聞き取る「月に1回の連絡すら無い」という言葉。 これは、親からあなたへの、寂しい叫びであり、同時に「危険信号」でもあります。
このブログを読み終えたら、今すぐスマホを手に取ってください。 そして、お父さん、お母さんに電話をかけてください。 あなたのその一本の電話が、大切な親の命を、文字通り「守る」ことになるのですから。


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