
認定調査の結果が出て、施設への入所が決まる。それはご家族にとって「介護の負担が減る」という安堵の瞬間であると同時に、「実家が空き家になる」という新たな問題の幕開けでもあります。
「とりあえず今は忙しいから、落ち着いてから考えよう」 その「とりあえず」が、数年後のあなたを地獄の相続トラブルや、多額の維持費、そして「法律の壁」に突き落とすかもしれません。施設入所とセットで考えるべき、実家のゆくえについて解説します。
1. なぜ「放置」は最悪の選択なのか?
実家を空き家のまま放置することには、想像以上のリスクが伴います。
- 建物の急速な老朽化: 人が住まなくなった家は、驚くほどの速さで傷みます。通風がないことでカビが発生し、シロアリ被害や倒壊、火災のリスク(放火など)も高まります。
- 経済的負担: 住んでいなくても固定資産税は毎年かかります。さらに、庭の雑草や木の枝が近隣に迷惑をかければ、その苦情対応や業者への支払いも発生します。
- 不法侵入と治安: 「空き家」であることは外観からすぐに分かります。不法投棄や不法侵入の温床となり、近隣トラブルの原因になります。
2. 実家の今後、5つの選択肢
状況に合わせて、最適な出口戦略を選びましょう。
① 売却する(最も推奨されるケース)
固定資産税や維持管理の手間から一気に解放されます。
- メリット: 売却益を施設費用や医療費に充てられる。「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」が適用される期間(譲渡日が属する年の12月末まで)に売却すれば、税制面で非常に有利です。
② 賃貸に出す
「思い出の家を手放したくない」という場合に。
- 注意: 家賃収入は魅力ですが、リフォーム費用や修繕リスク、賃借人とのトラブル対応など、実はハードルが高い選択肢です。
③ 解体して更地にする
建物が古すぎて価値がない、あるいは倒壊の危険がある場合。
- メリット: 土地として売りやすくなり、安全面も向上します。ただし、住宅がなくなることで固定資産税の減額特例が外れ、税金が上がる点には注意が必要です。
④ 管理を徹底して保持する
将来的に子供や親族が住む予定がある場合。
- ポイント: 「たまに見に行く」は無理が生じます。専門の空き家管理サービス(通風、清掃、点検)を利用し、資産価値を維持することを検討してください。
⑤ 相続土地国庫帰属制度を利用する
「売れないし、管理もできない」という土地を国に引き取ってもらう新しい制度です。
- 注意: 審査が厳しく、建物は取り壊さなければならない等の条件がありますが、負の遺産を切り離す最終手段となります。
3. 「今すぐ」やるべき3つのアクション
施設入所のバタバタに紛れて、これだけは進めておきましょう。
- 家族・親族間での意思統一: 誰が相続するのか、誰が主導して処分するのか。親御さんの意思が確認できるうちに話し合うことが、将来の「争続」を防ぐ唯一の道です。
- 荷物の片付け(生前整理): 施設への引っ越しを機に、不要なものを少しずつ処分します。すべてを業者に頼むと高額になりますが、入所タイミングで少しずつ進めることで、精神的な負担も軽くなります。
- 不動産会社へ「査定」を出す: 売却するか決めていなくても、**「今、この家がいくらになるのか」**を知っておくことは重要です。市場価値を知ることで、今後の施設費用の計画が具体化します。
4. 【最重要】認知症という「時間制限」
ここが最も重要です。 ご本人が認知症を発症し、判断能力が不十分だとみなされると、不動産の売却や解体といった契約行為は一切できなくなります。
たとえ家族であっても、親の家を勝手に売ることはできません。その場合、「成年後見制度」を利用して家庭裁判所の許可を得るという、非常に時間とコストがかかる手続きが必要になります。
「まだ元気だから大丈夫」ではなく、「元気なうちに」売却の委任や契約を進める。これが、認定調査を終えたご家族に私が一番伝えたいアドバイスです。
まとめ:施設入所は「攻め」の不動産戦略の始まり
実家の活用は、ご家族の経済的・精神的負担に直結します。
- お金に余裕がない、早く整理したい ⇒ 売却
- 将来住む可能性がある ⇒ 業者による管理保持
- 倒壊が怖い、誰も住まない ⇒ 解体して売却
親御さんが施設という新しい生活拠点へ移るタイミングこそ、実家の「出口」を決める最高のチャンスです。まずはケアマネジャーや、地域の不動産会社、あるいは相続に強い専門家に「ちょっと相談」することから始めてみませんか?
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